タスク管理をAIに任せるとき、何を渡して何を渡さないか
タスクの遂行が苦手で、思いついたことをすぐやりたくなる。この性質は矯正するより、決断のコストを外に出すほうが早い。そう考えて、日々のタスク管理をAIに任せる仕組みを組んだ。
何がつらかったのか
つらさの正体は「タスクが多いこと」ではなかった。毎朝「今日は何をやるべきか」を決めることだった。
17件のタスクリストを開くと、どれも同じ重さに見える。優先順位をつける作業自体にエネルギーを使い切って、着手する前に疲れる。そして思いつきが割り込むと、そちらのほうが魅力的に見えて崩れる。
だから仕組みに求めたのは「タスクを並べる機能」ではなく、「今日はこれをやれ」と言い切ってくれることだった。
役割分担
手足と頭脳を分けた。
| 役割 | 担当 | 具体的に |
|---|---|---|
| タスクの正典 | 自作のタスク管理アプリ | 状態・期限・優先度を持つ唯一の正 |
| 予定の正典 | カレンダー | 動かせない固定ブロック |
| 判断 | AI | 今日どれをやるかを決めてアプリに書き込む |
| 実行 | 自分 | 決まったものをやる。報告だけする |
重要なのは、AIが記憶を持たないこと。判断材料はすべてアプリと目標ファイルの側にあるので、会話が変わっても文脈が切れない。AIは毎回そこを読みに行って判断するだけの存在にした。
「今日は3つ」をやめた話
最初は「今日やることは原則3件」というルールを入れていた。生産性の文脈でよく見る型だし、絞ること自体は正しい。
しかし本人からこう指摘された。
別に3つに決めなくていいよ。重要な重いタスク1個だけやる日もあるし、軽い緊急度の高いタスクが大量にある日もあるでしょ
これは正しい。件数はアウトプットの結果であって、目標ではない。3件という数字を守ろうとすると、重いタスク1件で十分な日に無理やり2件足すことになる。
そこで基準を件数から「今日はこれで勝ち」のラインに変えた。
- 重いタスク1件の日 → 「これが終わったら勝ち」
- 軽い緊急タスクが大量の日 → 「この山を順番に片付けたら勝ち」
- 唯一残した制約 → 重いタスクは1日1〜2件まで
最後の1行だけは残した。マルチタスクができないという特性への構造的なガードで、これは件数ではなく性質の制約だから。
割り込みの扱い
思いつきを禁止する設計にはしなかった。禁止しても湧くし、湧いたものを我慢するコストのほうが高い。
代わりに、割り込みが来たときの手順を固定した。
- まず受け止める(否定から入らない)
- 分類する
- 緊急タスク(今日を組み替える価値がある)
- アイデア・事業ネタ(記録して育てる)
- 今やりたいだけの衝動(拾うが、今はやらない)
- 記録するか、予定を組み替える
- 最後に必ず1件だけ指して締める
4が肝心だった。「これは後でいいですね」で終わると、宙ぶらりんになって結局手が止まる。「では今やるべきはこれです」と1件に戻すところまでを手順に含めた。
3の「拾う」も同じくらい大事で、衝動的な思いつきもすべて記録される。捨てられないと分かっていれば、手放せる。
一番効いた設計判断
作っている途中で、設定ファイルの中に矛盾が見つかった。同じファイルの別々の場所に、こう書かれていた。
(正典マップ) タスクの起票 → 確認不要
(書き込みポリシー) タスク起票 → 本人対応。AIはリスト提示まで
放置していたら、夜の自動処理が「起票していいのか分からない」状態で動くところだった。仕組みを増やすときに本当に危険なのは新しい部分の不具合ではなく、古いルールとの食い違いが静かに残ることだと思う。
新しい仕組みを足したら、既存のルールを検索して矛盾を潰す。この一手間を省くと、あとで原因のわからない挙動として返ってくる。
いまのところ
器はできたが、判断の精度はこれから育てる段階にある。「今日やる分」の選び方がずれていたら、その場で言えば次から直る。
自動化で一番うれしかったのは時間が浮いたことではなく、朝に決断しなくてよくなったことだった。同じ悩みを持つ人は、機能を増やす前に「どの判断を手放したいのか」から考えると早いと思う。
- 2026-07-24_秘書体制構築.md