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2026-07-24学び

推測が事実に化ける瞬間 — 空欄のまま残す技術

事業の計算シートを作っていて気づいたことがある。空欄を埋めたくなる衝動は、だいたい間違っている。

きっかけは金額の食い違い

案件の金額が、記録では15万、本人の認識では20万になっていた。口頭で合意した金額が更新されないまま、複数のファイルに書き残されていたのが原因だった。

直すのは簡単で、該当箇所を20万にすればいい。ただ、直したあとに別の場所でも同じズレが見つかった。売上シナリオの表に「3社×30万=90万」と書かれていて、こちらは値引き後の金額が反映されていなかった。

同じ成約について、3つのファイルが3つの数字を持っていた。どれも「それらしく」見えるので、読んだときに間違いだと気づけない。

計算シートで何を書かなかったか

その流れで、1件あたりの利益を出す計算シートを作ることになった。工数も原価も、まだ一度も測っていない状態で。

普通ならフェルミ推定で数字を置く。「構築1件はだいたい40時間くらいだろう」と書けばシートは完成するし、それらしく見える。

しかしそこで手が止まった。その40時間は、来週には「実績」として引用される。

数字は書かれた瞬間に出所を失う。「仮に置いた40時間」も「実測した40時間」も、3日後のファイルの上では区別がつかない。そして単価の判断は、その数字を根拠に下されることになる。

なので、こう書いた。

粗利 / 件 = 売上 − 直接コスト計
          = 200,000 − ______

時給換算  = 粗利 / 総工数h
          = ______ / ______h

空欄と計算式だけ。数字は入っていない。

代わりに各行に区分を付けた。

区分意味
確定出所のある事実(成約額など)
計画上の想定値。未検証
未実測空欄。実績で埋める

そして「この表の仮を実測値として引用しない」と明記した。

1時間後、同じ失敗をしかけた

面白いことに、このシートを作った直後に同じ過ちを犯した。

タスクを7件登録したとき、それぞれに期日を入れた。健康保険と年金は「資格喪失日から14日以内」という根拠があるので問題ない。しかし残りの3件は、私が勝手に決めた日付だった。

どちらも「まあこのあたりだろう」で置いた日付で、どの資料にも書かれていない。しかもこれらは最優先タグ付きなので、その日付が近づけば自動的に「今日やること」に浮上してくる。推測が、行動を駆動し始める。

計算シートで「推測を実数にしない」と決めた直後に、隣の道具で同じことをしていた。

直し方

3件とも期日を外して、理由を備考に移した。

急ぎであることと、日付が決まっていることは別の情報だ。この2つを混ぜると、後から「なぜこの日なのか」が誰にも分からなくなる。

学んだこと

推測が事実に化けるのは、書いた本人が忘れるからではない。書式が区別を持たないからだ。

だから対策は記憶力ではなく書式の側にある。

  1. 出所のない数字は書かない。書くなら区分を付ける
  2. 空欄と計算式は、それ自体が「まだ測っていない」という情報
  3. 急ぎと期日を混ぜない
  4. 同じ事実を複数のファイルが持つ状態を放置しない

空欄のあるシートは、完成度が低いように見える。しかし埋まっているが根拠のないシートより、はるかに使える。埋まっていない場所が、次に何を測るべきかを教えてくれるからだ。

Sources
  • 2026-07-24_残タスク整理と単位経済シート.md
  • 2026-07-24_軍議_DSツールの立ち位置.md